「余儀なくローテク」
南極海まで行ってトラブルが起こると大変です。部品の予備は必ず用意していますが、その数にも限界があります。沿岸域の観測ではどこかの港で調達できる可能性もありますが、南極海にそんな港があるわけもないです。現場での臨機応変な対応が必要です。(茂木)
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1月5日
南緯55度の測点は、13時に開始。風速6m、波高2.2mですっかり穏やかになりました。ナンキョククジラドリの群れが飛び回っています。観測は順調・・・・と思いきや、1回目のCTDキャストの終了後、アーマードケーブルがキンクしている(よじれて曲がっている)ことが解りました。さあ大変。そのままでは危険で次のCTDキャストができません。アーマードケーブルは外側に2層の鉄線の被覆を持ち、中心に電線が1本通っているもので、単にCTDのフィッシュ(水中局)と採水装置を水中につるすだ
けでなくフィッシュに電流を送り、船上局に信号を伝える働きがあります。このため、修理するには①切断してキンクした部分を捨て、②重量物をつるための部品を取り付け直し、③アーマードケーブルの外層の鉄線と中心の電線を耐圧コネクター付きの電線につなぎ、④接続部をモールドして防水加工し、CTDのフィッシュを取り付けられるようにしなければなりません。この作業には、数時間かかります。とても貴重な時間を失うことになります。そこで、チョッサーや甲板部の人たちが考えたのは、アーマードケーブルにワイヤーを添わせてワイヤークリップで固定して強度を保つという方法でした。これには、いくつか問題があります。
そもそも、海鷹丸のCTDシステムは大型で重く、人が支えて水中に下ろしたり、デッキ上に回収したりするのが大変なので、嵌脱装置つきのクレーンで操作しています。結構ハイテクで、嵌脱装置でフレームをキャッチしてクレーンで船外に運び、リリースしてケーブルを繰り出す。あるいは、逆の操作でケーブルを巻き込んでキャッチしてからクレーンでデッキに運ぶというようになっています。このため、揺れの激しい海でも安全に観測ができるのです。ところが、ケーブルにワイヤーを添わせると、そ
の部分を滑車に通せないので嵌脱装置が使えなくなるのです。ということで、ケーブルでつったままフィッシュを海に入おろし、同様に回収するという人力作戦になりました。浅いほうのキャストで短時間で済むこと、海が穏やかで人力作業でも安全性が確保できることなど、いろいろ勘案してのローテク作戦でした。船では、臨機応変に故障に対応して観測を続けます。百戦錬磨の乗組員は、とても頼りになります。
実は、アーマードケーブルは昨日もキンクして修理したばかりだったのです。次の観測点につくまでに原因を究明しなければなりません。観測時間の問題だけでなく、修理部品が足りなくなる心配があります。(石丸)

嵌脱(かんだつ)装置(先端部分)つきクレーンです。このクレーンがあるおかげで、荒れた海でのCTDの投入や回収が安全かつ容易にできるのですが・・・。

こちらも1月5日の写真です。嵌脱(かんだつ)装置を使わないでCTDの回収をしています。くれぐれも慎重にお願いします。(茂木)

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