TTP問題
南極海では、観測中や航走中に、海鳥類はもちろんのこと鯨類やアザラシをしばしば目にします。この高次捕食者の分布は、動物プランクトンや魚類の地理的な分布のみならず鉛直分布にも深く関与しています。私たちは10年近くにわたり南極海の動物プランクトンや魚類の生態や分布について研究してきましたが、これまでこの高次捕食者については専門家がいなかったこともあり、手を出さずにいました。しかし、生態系の研究が進行するに従って、どうしてもここを押さえたいという気持ちが強くなっていました。そして、ついにKARE16で、まず手始めにこれらの目視調査(センサス)を行うことになりました。私が乗船しないにも関わらず、です。この新たな研究課題に中心的に取り組んでくれることになったのは東京海洋大学海洋観測支援センターの岩田博士です。岩田さんは国立極地研でアザラシの行動生態の研究で、博士号を取ったばかりの若い研究者です。その若さをいいことに斬新なアイデアで我々を困惑させることもありますが、いつもなかなか意欲的です。高次捕食者の中でも我々が注目しているのは飛翔性海鳥です。いちいち飛翔性というのは南極海には非飛翔性海鳥のペンギンさんがいるからです。今回はセンサスのみですが、近い将来、彼らをとっ捕まえて、食べ物を調べたり(胃内容物調査)、食物網を解明するための組織標本を採取したりする計画を立てています。この大型プロジェクトは「鳥をとっ捕まえるプロジェクト」(TTP)と命名されています。さて、飛翔性海鳥は南極海まで行くと種数はあまり多くないのですが(個体数は多い)、やはり飛んでいる鳥を同定しようというのは初心者の我々にはたいへんな作業です。そのため初心者でもできるだけ科学的なデータを取れる方法論を構築し、さらに同定のポイントを覚えなくてはなりません。写真は、昨日の壮行会の直前まで行われていた勉強会の様子です。中央が岩田さん。みんな、がんばれ~。

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