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東京海洋大学南極観測隊を紹介するブログです。昨年、海洋大「海鷹丸」ウェブページ内で「ペンギンさん、そこのけそこのけ海鷹丸が通る」というタイトルで綴っていたものの続編です。(今年は大学非公認)

コオリウオ

2008年2月3日に、アデリーランドと呼ばれる地域の大陸棚海域で採集された、コオリウオの仲間の稚魚です。稚魚といっても37 mmくらいあるので稚魚としてはかなり大きいです。頭部や内臓周辺などを除いて色素に乏しくほとんど半透明な体は、浮遊期の魚の特徴をよく備えています。この魚の親は底生生活を送りますが、子供は表層から中層をあまり泳がずに漂うようにして暮らしているものと思われます。しかも、その浮遊生活期間は1年かそれ以上にわたる場合もあります。浮遊期の特徴をよく備えていると書いたばかりですが、頭部は、その貧相な胴体にくらべて大きくよく発達しています。よく観察すると、顎の骨格は発育が進み、鋭い犬歯状の歯が生えそろっています。一方その胴体にはあるはずの脊椎骨がまだ出現していません。筋肉は丈夫な骨格が無いと支えられませんから、この稚魚は普通の魚のように泳ぐことが出来ないはずで、なのに顎だけ立派なのです。おそらく彼らは水の中で漂いながら餌の動物プランクトンが近寄るのを待っていて、近づいてきたらその大きな顎と鋭い歯で食いつくのでしょう。もともと飢餓にも強いと考えられ、餌を探して泳ぎまわることより待っていたほうが、エネルギー効率がよいものと思われます。これは餌の少ない深海に生きる生物がよく取る戦略です。南極海はオキアミや鯨類で代表される豊かな海のように思われがちですが、オキアミが生息する海域以外は、生物量はきわめて小さいと考えられています。じつはこのコオリウオの胃内容物を調べるとかなり高頻度で同種のコオリウオが出てくることがあります。共食いです。魚の世界では割とあることです。


kooriuo.jpg

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2012-12-17 : 未分類 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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