一枚の写真
2008年1月、海鷹丸がフランスのデュモン・デュルビル基地の近くに投錨したとき撮影した写真です。だいぶ遠くから望遠レンズで撮影したものですが、分かりますか?ゴマ粒のようにみえるのはアデリーペンギンです。ここはアデリーペンギンの繁殖地(営巣地)で、おびただしい数のペンギンが卵を抱いて、ヒナを育てています。さらによく見ると、丘の上の方、ペンギンが集中している場所の周辺は赤茶色になっています。これはオキアミを食べたペンギンの糞の色です。ペンギンは、先日紹介したオキア
ミを主に食べているためその糞も赤くなるのです。そして、そして、そのペンギンの営巣地の上空には鳥が飛んでいます。これは、ペンギンのヒナや卵をねらうオオトウゾクカモメです。そう、この写真一枚の写真に、オキアミ→ペンギン→オオトウゾクカモメ、という南極では基本的な、海の基礎生産(植物プランクトン、オキアミの餌)が、オキアミを介して高次捕食者までつながるという食物連鎖が一枚の写真に表れています。このように、基礎生産から高次捕食者まで比較的短いリレーでつながる単純な生態系(食物連鎖)は南極海の典型とみられていました。それは、先日もここで書いたように、ナンキョクオキアミの膨大な生物量に支えられています。しかし、近年では南極海の生態系も必ずしもそんな単純では無い、ということが徐々に分かってきており、それをさらに深く解明することが海洋大の南極海生態系研究チームの、大きな研究テーマのひとつとなっています。

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